フィリピンから特定技能を呼ぶには?MWO申請からビザ取得までの流れ・費用・注意点を解説

フィリピンから特定技能外国人を現地採用(呼び寄せ)する場合、日本側の「在留資格認定証明書(COE)」の手続きだけでなく、フィリピン政府が定める独自の手続き(MWO/DMWの手続き)を事前に完了させることが義務付けられています。

手続きの全体像、標準的なフロー、および実務上の重要ポイントを解説します。

1. 渡航手続きの全体フロー(約6〜9ヶ月)

フィリピンからの呼び寄せは、「①フィリピン側の受入許可手続き」→「②内定・雇用契約」→「③日本側のビザ手続き」→「④フィリピン側の出国許可手続き」の4段階で進みます。

【フェーズ1:フィリピン側の事前承認】
  1. フィリピン公認の送出機関(PRA)の選定・募集取決め(RA)締結
  2. MWO(移転労働者事務所)へ書類提出・審査
  3. MWOによる面接(受入企業の代表者または正社員)
  4. DMW(移住労働者省)への求人・受入企業登録

【フェーズ2:採用・契約】
  5. 現地での募集・選考・面接
  6. 雇用契約の締結(DMW認証フォーマット)

【フェーズ3:日本側のビザ申請】
  7. 出入国在留管理局へ「在留資格認定証明書(COE)」交付申請
  8. COE交付後、現地本人へ送付

【フェーズ4:フィリピン側の出国手続き・渡航】
  9. 在フィリピン日本国大使館でビザ(査証)申請
 10. OWWAによる「出国前オリエンテーション(PDOS)」の受講・健康診断
 11. OEC(海外雇用許可証)の取得
 12. 入国・就労開始

2. 各フェーズの詳細と必要ポイント

フェーズ1:フィリピン側の事前承認(約2〜3ヶ月)

他国と大きく異なる点がこのフェーズです。企業がフィリピン人を採用・契約する前に、フィリピン政府からの承認を受ける必要があります。

  1. 送出機関(PRA)との契約・公証
    • フィリピン政府(DMW)が認定した現地送出機関と募集取決めを締結します。
    • 契約書は日本の公証役場で公証を受ける必要があります。
  2. MWO(旧POLO)への書類申請と面接
    • 日本国内にあるMWO(東京または大阪)へ求人票や会社概要、雇用契約書雛形などを提出します。
    • 書類審査後、受入企業の代表者または委任を受けた社員がMWOで英語面接を受けます(通訳同席可。代理の行政書士や登録支援機関のみでの面接は不可)。
  3. DMW(旧POEA)への登録
    • MWOの審査・面接を通過すると推薦書が発行され、DMWに受入企業および求人が登録されます。

フェーズ2:採用・雇用契約(約1ヶ月)

  • DMW登録後、現地で候補者の募集・面接を実施します。
  • 内定を出したら特定技能雇用契約を締結します。

フェーズ3:日本側のビザ申請(約2〜3ヶ月)

  • 出入国在留管理局へ在留資格認定証明書(COE)の交付申請を行います。
  • COEが交付されたら、原本をフィリピン現地の本人(または送出機関)へ郵送します。

フェーズ4:フィリピン側の出国手続き(約1〜2ヶ月)

  1. 査証(ビザ)発給申請: 現地の日本大使館(または代理申請機関)でビザを発給してもらいます。
  2. PDOS(出国前オリエンテーション)受講・健康診断: フィリピン海外労働福祉庁(OWWA)が実施する講習を受講し、指定医療機関で健康診断を受けます。
  3. OEC(海外雇用許可証)の発行: ビザ・PDOS修了証・健診結果を揃えてDMWへ申請し、OECを取得します。
    • ※フィリピンでは、このOECがないと空港で出国を拒否されます。

3. 実務上で特に注意すべき重要ポイント

  • 事前承認なしでの雇用契約締結は不可
    • DMWへの受入企業登録(フェーズ1)を終える前に内定を出して雇用契約を結ぶことは、フィリピンの法令上禁じられています。
  • 費用負担のルール
    • 送出機関への手数料、MWO申請費用、現地渡航費、渡航前の健康診断費用などは原則として受入企業(または登録支援機関)側が負担する必要があります。求職者本人に違法な費用負担をさせないよう管理が必要です。
  • COEの有効期限(3ヶ月)との兼ね合い
    • 日本で発行されるCOEには3ヶ月の有効期限があります。COE交付後に現地でのOEC取得手続きに時間がかかりすぎると期限が切れてしまうため、COE申請のタイミングや受取後の現地手続きをスムーズに連動させることが極めて重要です。

よくある質問

1. MWO申請・企業面接に関する質問

Q. MWOの企業面接には誰が出席する必要がありますか?

  • 回答: 受入企業の代表者、または人事・採用の権限を持つ正社員(役員・部長等)が出席する必要があります。
  • コンサルティング会社、行政書士、登録支援機関の担当者のみでの代理出席は認められていません。ただし、面接時の通訳者を同席させることは可能です。

Q. MWO面接では具体的にどのようなことを聞かれますか?

  • 回答: 主に以下の内容が質問されます。
    1. 会社概要・事業内容: なぜフィリピン人を採用したいのか
    2. 業務内容と労働条件: 契約書通りの作業か、日本人と同等以上の賃金か
    3. 住居・生活支援体制: 部屋の広さ(原則1人あたり4.5㎡以上)、家賃控除額の妥当性
    4. 安全管理とサポート: 労働災害の防止策、日本語学習や相談体制

Q. 既に技能実習や他国で特定技能を受け入れていますが、MWO申請は必要ですか?

  • 回答: 必要です。
  • フィリピン人を初めて雇用する場合、過去に他国(ベトナムやインドネシア等)から受け入れた実績があっても、フィリピン政府への企業登録(MWO申請・DMW登録)は個別に完了させる必要があります。

2. 費用・コストに関する質問

Q. 受入企業が必ず負担しなければならない費用は何ですか?

  • 回答: フィリピン政府の規定により、以下の費用は原則として企業(または登録支援機関)側が負担し、本人へ請求・自己負担させることが禁止されています。
    • 現地送出機関(PRA)への手数料(Agency Fee)
    • MWO申請・契約書の公証費用
    • 渡航用航空券代(往復)
    • 現地での健康診断費用・PDOS講習受講料

Q. 採用から入国までの費用総額の目安はどのくらいですか?

  • 回答: 1名あたりの目安は約60万〜100万円程度(国内の人材紹介会社手数料、PRA費用、行政書士費用、渡航費等の合算)となるケースが一般的です。

3. スケジュール・手続きに関する質問

Q. 採用を決めてから入国(就労開始)までどれくらいの期間がかかりますか?

  • 回答: 全体で約6ヶ月〜9ヶ月を見込む必要があります。
    • MWO申請〜面接・承認:約2〜3ヶ月
    • 日本側COE(在留資格認定証明書)申請〜交付:約2〜3ヶ月
    • 現地ビザ発給・PDOS受講・OEC(海外雇用許可証)取得:約1.5〜2ヶ月

Q. 日本国内にいるフィリピン人を採用(転職)する場合もMWO手続きは必要ですか?

  • 回答: 必要です。
  • 日本国内にいるフィリピン人を特定技能として雇用(または他資格から変更)する場合でも、駐日フィリピン大使館/領事館(MWO)への契約変更・雇用登録手続きを行わなければなりません。

4. 契約・制度に関する質問

Q. 登録支援機関を使わず、自社(社内)で支援を行うことは可能ですか?

  • 回答: 過去2年間に中長期間の外国人受け入れ実績がある等の要件を満たしていれば、自社支援(特定技能所属機関による直接支援)も可能です。ただし、その場合でもMWO手続きやRA締結の手間が省略されるわけではありません。

Q.留学生・技能実習生・他社特定技能など、転職元の在留資格に応じた個別の注意点を教えてください。

日本国内にいるフィリピン人を特定技能として採用する場合、転職元(前職)の在留資格(「留学」「技能実習」「特定技能」)によって、試験免除の有無・入管申請の難易度・スケジュール感が大きく異なります。

それぞれの在留資格に応じた個別の注意点と実務上の対策を解説します。

1. 「留学」からの変更(留学生の採用)

学歴や専攻を問わず試験合格で採用できる反面、「学業状況」と「アルバイトのオーバーワーク」が審査の最大の関門になります。

⚠️ 個別の注意点・リスク

  • 資格外活動(週28時間上限)の超過チェック
    • 入管審査で、留学中のアルバイトで週28時間(長期休業中は1日8時間)を超えて働いていなかったか、過去の課税証明書や預金通帳で厳密に確認されます。超過があった場合、不許可になるリスクが非常に高いです。
  • 出席率・学業状況
    • 在籍校(日本語学校・専門学校・大学など)の出席率が80%未満であったり、成績不良で中退・退学した場合は「留学の在留資格を適正に維持していなかった」とみなされ、特定技能への変更審査が厳しくなります。
  • 試験の免除は「なし」
    • 技能実習と異なり、「技能評価試験」と「日本語試験(JLPT N4またはJFT-Basic以上)」の両方の合格が必須です。

💡 実務上の対策

  • 内定前に「成績証明書」「出席率証明書」「直近の課税・納税証明書」を提出してもらい、過剰就労や素行に問題がないか事前に確認します。
  • 卒業前に試験に合格させておき、卒業後速やかにMWO申請・在留資格変更申請へ移行できるようスケジュールを組む必要があります。

2. 「技能実習(2号・3号修了)」からの変更

最もポピュラーなルートですが、「実習職種との関連性」と「移行時期のタイミング」に注意が必要です。

⚠️ 個別の注意点・リスク

  • 試験免除の適用条件
    • 技能実習2号または3号を「良好に修了」しており、技能実習の職種と特定技能の分野に完全な関連性(同一分野)がある場合のみ、技能・日本語試験が免除されます。
    • ※全く異なる分野(例:農業の技能実習生 ➔ 外食の特定技能)へ移行する場合は、日本語試験は免除されますが、移行先分野の「技能評価試験」への合格が必要となります。
  • 「特定活動(移行準備)」への一時的な切り替えリスク
    • 技能実習の満了日までにMWO認証や特定技能の申請が間に合わないケースが多発します。その場合、就労可能な「特定活動(4ヶ月・特定技能移行準備)」ビザへ一度変更する手続きが発生し、追加の印紙代や行政書士費用がかかります。

💡 実務上の対策

  • 技能実習の満了日(帰国予定日)の少なくとも4〜5ヶ月前からMWO申請の準備を開始してください。
  • 技能実習時代の監理団体や実習先企業から「修了評価書」または「技能実習2号良好修了の証明書」を確実に取得・保管してもらいます。

3. 「他社で特定技能」からの転職(他社からの移籍)

即戦力として期待できる反面、「退職理由」「前会社でのトラブル」「一時帰国時のOEC」に関するリスクがあります。

⚠️ 個別の注意点・リスク

  • 前職での解雇・人間関係トラブル
    • 特定技能は転職の自由がありますが、前会社との契約解消(退職)理由が「懲戒解雇」や「本人の重度な自己都合トラブル」である場合、入管やMWOでの審査が慎重になります。
  • 退職証明書・離職票の入手
    • MWO手続きおよび入管手続きにおいて、前職を適法に退職したことを証明する「退職証明書」や「離職票」の提出が必須です。前職と揉めて退職した結果、書類を出してもらえず手続きがストップするトラブルに注意してください。
  • DMW上の登録変更(OEC発行データ)の漏れ
    • 日本側の在留資格変更(新しい会社での在留カード受取)が完了しても、フィリピン政府(DMW)のシステム上で「雇用主(受入企業名)」を自社に変更する後届出を行っていないと、本人がフィリピンへ一時帰国した際に再出国許可(OEC)が下りず、日本に戻れなくなります。

💡 実務上の対策

  • 採用面接時に前職の退職理由を正確にヒアリングし、円満退職の手続きを行ってもらいます。
  • 入社・変更許可後、自社からDMW(在日MWO経由)へ雇用主変更届・データ更新の手続きを忘れずに完了させます。

比較まとめ

転職元の在留資格技能・日本語試験最も注意すべきチェックポイントスケジュールの目安
留学生両方必要週28時間制限の超過がないか、学校の出席率卒業の4〜6ヶ月前から準備
技能実習生条件付き免除実習2号の良好修了証明、実習満了日からの逆算実習満了の4〜5ヶ月前から準備
他社特定技能原則免除前職からの退職証明書の入手、入社後のDMW更新(OEC)内定後2〜3ヶ月程度

まとめ:フィリピン特定技能の成功は「MWO/DMW手続き」の事前準備がカギ

フィリピンからの特定技能外国人の受け入れ(呼び寄せ・国内採用)は、他国からの採用と比較して「フィリピン政府独自の手続き(MWO/DMW)」が存在するため、手順やルールを正確に理解しておくことが極めて重要です。

最後に、企業側が押さえておくべき最重要ポイントを振り返りましょう。

  • 受入企業としての事前登録が必須 自社が直接採用・国内転職採用する場合であっても、MWOでの企業審査・面接を経た「DMW登録」を避けることはできません。
  • 現地送出機関(PRA)との連携と公証手続き 契約(RA)の締結や公証役場での認証など、事前の法律上の手続きを正しく進める必要があります。
  • 費用負担とコンプライアンスの遵守 渡航費やPRA手数料など、企業側が負担すべき費用ルールを守り、不当な本人負担を防ぐ管理が求められます。
  • 余裕を持ったスケジュール管理 MWO申請から実際の就労開始までには約6〜9ヶ月(国内採用でも2〜3ヶ月)のリードタイムを見込んで準備を開始しましょう。

フィリピン人材は日本語習得の早さや人柄の明るさから、現場の即戦力として非常に高い評価を得ています。制度と実務の流れを正しく把握し、計画的な受け入れを進めていきましょう。

代表行政書士

行政書士新川健人
行政書士新川健人
・日本行政書士会連合(登録番号第25271950号)
・京都府行政書士会(会員番号第3070号)
・申請取次行政書士(第172025200209号)
京都在住。外国人の就労ビザ、配偶者ビザ申請、国際結婚など国際業務を専門。スピード対応が得意。