外国人の地方参政権について判例では
外国人に憲法は参政権を保証していないと示しました。
しかし参政権を付与することは憲法違反ではないことも示しました。
ただ実際には付与する措置までは講じられていません。
この判例に出てくる公共的事務とは聞きなれい言葉ですが、
法定受託事務と自治事務のどちらも含んでいるという意味です。
「外国人の地方参政権」に出てくる公共的事務の詳細
「外国人の地方参政権」の議論において、「公共的事務」という言葉は、最高裁判所の1995年の判決の中で重要な位置を占めています。
この判決で最高裁は、憲法が外国人に参政権を保障していないことを明確にしつつも、「民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づいてその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解される」と述べています。
そして、この「住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務」の処理に、永住者など「特段に緊密な関係を有する」外国人の意思を反映させるために、法律で地方選挙権を付与することは憲法上禁止されない、という判断を示しました。
では、この「住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務」とは具体的にどのような事務を指すのでしょうか?
地方公共団体(都道府県や市町村)が処理する事務は、大きく分けて「自治事務」と「法定受託事務」の2種類があります。
自治事務:
地方公共団体が、その地域住民の福祉の増進を図ることを目的として、自主的に処理する事務です。
地方公共団体自身がその事務について条例を制定するなど、広範な裁量権を持っています。
「住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務」の多くは、この自治事務に該当すると考えられます。
具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
教育: 小中学校の設置・管理、学校給食、教育委員会の運営など
福祉: 介護保険、国民健康保険の給付、児童福祉、高齢者福祉、障害者福祉サービスなど
生活環境: ゴミの収集・処理、上下水道の整備・管理運営、消防・救急活動、公園の整備・管理など
住民サービス: 住民票や戸籍の事務(ただし、戸籍は国に大きく関わる部分もある)、印鑑登録など
まちづくり: 都市計画の策定、市町村道の建設・管理など
産業振興: 中小企業支援、観光振興など
法定受託事務:
本来は国や都道府県が行うべき事務を、法律に基づいて地方公共団体が受託して処理する事務です。
地方公共団体は、国の指示・監督を受ける範囲が自治事務よりも広いです。
具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
国政選挙・地方選挙に関する事務: 選挙人名簿の作成、投票所の設置・運営など(地方選挙の一部は「第2号法定受託事務」に該当)
国の統計調査に関する事務: 国勢調査など
旅券(パスポート)の交付事務
生活保護の決定・実施(市町村が福祉事務所を設置している場合)
戸籍事務の一部 (出生、婚姻等の届出の受理など、国の事務と密接に関連する部分)
国道の管理事務の一部
最高裁が言及する「住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務」は、特に自治事務の領域を強く意識していると考えられます。
なぜなら、自治事務は、地方の住民の意思を直接的に反映させることで、その地域に合ったきめ細やかな行政サービスを提供することを目的としているからです。
外国人も地域住民としてこれらの自治事務に関わる行政サービスの恩恵を受け、またその費用を負担していることから、その運営に関与する権利を認めるべきではないか、という考え方の根拠となっています。

