正当防衛と緊急避難の違いについてわかりやすく解説します。
まず混同しやすいこととして「正当防衛」と「緊急避難」には民法上のものと刑法上のもので違いがあります。
①飼われている犬に襲われそうになり他人の敷地内の物を壊した場合どのように責任を負うか
という例題において
民法上では犬は物扱いなので飼い主の不法行為に対して自己の身を避けるためやむを得ず物を壊したことは「正当防衛」にあたります。
そしてこのときに
②襲ってきた犬(物)に対して反撃した場合は民法上では「緊急避難」に該当します。
避難という言葉は危機を避けて安全な場所に行くこととして日常で使われているため普通の感覚で考えると上記前者のパターンは「緊急避難」で後者の方が「正当防衛」としてしっくり来てしまうので注意が必要です。
一方、刑法上では上記①②のパターンがどのように扱われるかというと
①飼われている犬に襲われそうになり他人の敷地内の物を壊した場合
「自己又は他人」の「生命・身体・自由・財産」に対する現在の危難に対して、これを避けるため、やむを得ず他人やその財産に危害を加えたとしても、「これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」に該当し「緊急避難」として扱われる。
②襲ってきた犬に対して反撃した場合
このパターンは民法と同じで「緊急避難」が成立する。
刑法ではどちらの場合も「緊急避難」となるのです。
では今度は飼われている犬ではなく
③野生の犬に襲われそうになり他人の敷地の物を壊した場合
を民法と刑法ではどのように扱うかを考えてみましょう。
まず民法の場合は
犬は物にあたり、飼い主という人もいないため不法行為が存在しないこととなり「正当防衛」が成立しません。
また犬自体に反撃するわけでもないため「緊急避難」も成立しません。
では野犬に襲われた者は敷地の物を壊された人に損害を賠償しなくてはならないのでしょうか。
結論、野犬に襲われた者は損害賠償をしなければならない可能性が高いと言えます。
しかし、刑法の場合は
「自己又は他人」の「生命・身体・自由・財産」に対する現在の危難に対して、これを避けるため、やむを得ず他人やその財産に危害を加えたとしても、「これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」に該当し「緊急避難」として扱われます。
まとめると③の場合、刑事上の処罰の対象とはなりませんが民事上の損害賠償を負うことになります。
おさらいすると飼い犬が襲ってきた場合は飼い主の不法行為とみなされるということだね。
人の不法行為に対して、自分の体を守るため、やむを得ずした行為は「正当防衛」にあたるよ。
コメント