近年、インバウンドの回復とともに民泊(住宅宿泊事業)の利用が急増しています。しかし、それに伴い騒音やゴミ出し、セキュリティに関するトラブルも多発。政府や自治体は規制強化の動きを見せていますが、その結果として、届け出を出さない「闇民泊」が水面下で増加するのではないかという懸念が専門家から上がっています。
🚨 規制強化の先に潜む「闇民泊」増加のリスク
既存の住宅宿泊事業法(民泊新法)は、年間営業日数を180日までに制限するなど、もともと厳しい規制を設けています。しかし、トラブルの増加を受け、自治体によっては独自の条例でさらに厳しい制限(例:特定エリアでの週末のみの営業許可など)を設ける動きが相次いでいます。
専門家の指摘
- 「規制強化が必ずしもトラブル解決に繋がらない」:宿泊事業者にとって規制が厳しすぎると、合法的な届け出を避け、監視の目が届きにくい「闇民泊」として営業を続けるインセンティブが高まります。
- 「住民生活環境のさらなる悪化」:闇民泊は自治体の監視下にないため、宿泊者名簿の確認や適切な管理が行われず、騒音や不法投棄といったトラブルがより深刻化し、近隣住民の生活環境がさらに悪化する恐れがあります。
民泊経営が「日本移住の抜け穴」に?
規制強化とは別の側面として、一部の外国籍の投資家の間で、民泊経営が日本での在留資格(ビザ)取得の「抜け穴」として利用されているとの指摘もあります。
🏢 経営・管理ビザの取得
- 日本で会社を設立し、民泊事業を立ち上げることが、「経営・管理」の在留資格(いわゆる投資家ビザ)を取得するための要件を満たしやすいルートとされています。
- このビザは、日本に継続的に滞在し、事業を経営・管理する活動を行うためのものですが、実態のないペーパーカンパニーや、ごく小規模な民泊物件の運用だけで取得を目指すケースが問題視されています。
🚧 懸念される点
- 事業の実態不足:真に地域経済に貢献する事業としてではなく、在留資格の取得を主目的としているため、事業運営がずさんになりがちです。
- 悪質な転売行為:ビザ取得後に物件や権利を転売するなど、短期的な利益追求に走り、長期的な地域社会との調和を無視した行動が懸念されています。
🤝 今後求められる対策
民泊がもたらす経済効果と、地域住民の生活環境維持のバランスを取るためには、規制を「厳しくする」だけでなく、「実効性のあるものにする」視点が重要です。
- 闇民泊への取締り強化:インターネット上の広告や予約プラットフォームとの連携を強化し、無許可営業に対する罰則適用を徹底すること。
- 地域共存のための枠組み:合法的な事業者に対しては、地域住民との連絡体制構築や、宿泊者へのマナー教育義務付けなど、地域に貢献するインセンティブとセットにした規制緩和の検討。
- 在留資格審査の厳格化:民泊事業を基盤とする「経営・管理」ビザについて、事業計画の実現可能性や継続性、地域社会への貢献度をより厳しく審査する基準の見直しが求められています。
民泊を健全に発展させ、インバウンドの恩恵を最大限に享受するためには、事業者、自治体、そして住民が協力し合い、新たなルールづくりを進めていくことが不可欠です。

