確定申告の還付金について行政書士FPが解説します。

確定申告の還付金とは

確定申告をすることによって、納めすぎた所得税が国から返ってくるお金のことです。

会社員の方でも、年末調整だけでは対応できない控除がある場合、確定申告をすることでこの還付金を受け取れる可能性があります。

確定申告を還付金がもらえる場合とは

会社員の場合、毎月の給与から所得税が天引き(源泉徴収)されています。
これは、あくまで概算の税額です。
年末に会社が行う「年末調整」で、生命保険料控除などの適用を受け、税金の精算が行われます。

しかし、年末調整では適用できない控除がいくつかあります。
それらの控除を受けるためには、ご自身で「確定申告」をする必要があります。
確定申告で税金が再計算され、本来納めるべき税額より多く納めていた分が「還付金」として戻ってくる、という仕組みです。

確定申告をすることで還付金を受けられる主なケース

以下のような支出があった年や状況に当てはまる方は、確定申告をすることで還付金を受け取れる可能性があります。

多額の医療費を支払った(医療費控除)
1年間の医療費の合計が10万円(または総所得金額の5%)を超えた場合。
生計を同じにする家族の分も合算できます。

ふるさと納税などの寄付をした(寄付金控除)
ワンストップ特例制度を利用していない場合。

住宅ローンを利用して家を買った(住宅ローン控除の1年目)
住宅ローン控除を受ける最初の年は、必ず確定申告が必要です。(2年目以降は年末調整で対応可能)

年の途中で退職し、年末調整を受けていない
概算で多めに天引きされていた税金が、確定申告をすることで還付されることが多いです。

株や投資信託などで損失が出た
他の利益と相殺(損益通算)したり、損失を翌年以降に繰り越したりする場合。

災害や盗難にあった(雑損控除)

副業をしていて還付金を受け取れる場合

副業が赤字の場合、確定申告をすることで本業の給与から天引きされた所得税が還付される可能性があります。

これを損益通算(そんえきつうさん)といいます。
本業の利益(給与所得)と副業の赤字を合算し、年間の所得全体を少なく計算し直すことで、払いすぎていた税金が戻ってくる仕組みです。

ただし、すべての副業の赤字が対象になるわけではないため、注意が必要です。

損益通算できるかどうかは、その副業がどの「所得区分」に当てはまるかによって決まります。

所得区分具体例損益通算
事業所得本格的なWebサイト運営、コンサルティング、ウーバーイーツ配達員、アフィリエイトなど、継続的・安定的に行い、帳簿などをしっかりつけている副業⭕️ できる
不動産所得アパートや駐車場の賃貸など⭕️ できる
雑所得メルカリでの不用品販売、単発の原稿料や講演料、手作りアクセサリーの販売など、事業と呼ぶほどの規模ではない副業❌ できない

「事業所得」の赤字は、給与所得と損益通算できますが、「雑所得」の赤字は、他の所得(給与所得など)と損益通算することはできません。
税法上、所得はなかったもの(0円)として扱われます。

ご自身の副業が「事業所得」なのか「雑所得」なのかの判断が最も重要になります。
一般的に、継続して相当の時間を費やし、帳簿書類の保存があれば「事業所得」と認められやすくなります。

還付金の仕組みは例えば以下のようになっています。

本業の給与所得:500万円(源泉徴収で約16万円の所得税を納税済み)
副業(事業所得)の赤字:-50万円

損益通算を行う
500万円(給与所得)−50万円(事業所得の赤字)=450万円
この年のあなたの所得は450万円として再計算されます。

税金の再計算
本来、所得450万円に対応する所得税額(仮に約13万円とします)を納めればよかったことになります。

還付金の発生
16万円(納税済み)−13万円(本来の税額)=3万円
差額の3万円が還付金として戻ってきます。

会社に副業がばれたくない場合

確定申告をすると、所得情報が市区町村にも送られ住民税が計算されます。
損益通算で所得が減ると、本業の給与から天引きされる住民税も減るため、経理担当者に「なぜこの人の住民税は少ないのだろう?」と疑問に思われる可能性があります。

そういった場合は確定申告書の第二表にある「住民税に関する事項」で、給与所得以外の住民税の徴収方法を「自分で納付」(普通徴収)にチェックを入れることで、住民税が会社に通知されることを防げます。
ただし、自分で納付する手間や自治体によっては普通徴収が認められない場合や、会社が特別徴収(給与天引き)を義務付けている場合もあります。
そして、副業が赤字の場合は所得が減るため、結局は本業の給与にかかる住民税額に影響が出ます。

また、会社の就業規則によっては副業自体を禁じている場合もあるため一度確認することをおすすめします。

確定申告の還付金を受け取るための手続き

還付金を受け取るためには「還付申告」を行います。

還付申告は、確定申告の義務がない人(主に会社員など)が、払いすぎた税金を取り戻すためだけに行う確定申告のことです。

還付金を受け取るための還付申告は、通常の確定申告期間(翌年2月16日〜3月15日)とは異なります。

還付申告ができる期間はお金を支払った年の翌年1月1日から5年間です。
例えば、2024年中に支払った医療費の還付申告は、2025年1月1日から2029年12月31日まで提出できます。

還付金は確定申告書を提出し、税務署での審査を経て支払われます。

e-Tax(電子申告)の場合は約2〜3週間、

郵送や税務署窓口で提出した場合は約1ヶ月〜1ヶ月半後に受け取ることができます。

還付金は確定申告書の「還付される税金の受取場所」欄に記入した、申告者本人名義の銀行口座へ振り込まれます。

確定申告は「納税の義務」というイメージが強いですが、払いすぎた税金を取り戻す「権利」でもあります。

ご自身に当てはまるものがないか、一度確認してみることをお勧めします。

この記事を書いた人
京都安心行政書士事務所

【保有資格】
・行政書士(日本行政書士会連合会登録/京都府行政書士会所属)・ファイナンシャルプランニング技能士3級(資産設計提案業務)・宅地建物取引士試験合格

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