まず使用者責任とは、労働者が仕事中に不法行為によって第三者に損害を与えた場合、労働者だけでなく使用者も賠償責任を負う可能性があることを指します（民法715条1項）。
この場合、損害の公平な分担という観点から、使用者と従業員の間でも損害の全部または一部について負担するべき場合があると考えられています。
損害の公平な分担の理念には、「報償責任(ほうしょうせきにん)」の考え方が含まれており、社会生活において大きな利益を収める者は、その収益活動から生じる損害に対して常に責任を負わなければ公平ではないという考えがあります。
なので不法行為だけ見れば労働者の過失だけであっても使用者にも責任があるとされています。
その上で判例では「公平な分担」は諸般の事情を考慮することが示されました。
「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」
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