喫煙可能な飲食店を開業するには!改正健康増進法に対応した手続きと注意点を解説

2020年4月1日の改正健康増進法全面施行により、多くの飲食店が原則屋内禁煙となりました。しかし、一部の要件を満たすことで、店内を「喫煙目的施設」として営業することが可能です。特に、バーやスナックなど、お酒をメインに提供する飲食店にとっては重要な選択肢となります。

ここでは、飲食店を喫煙目的施設として営業するための具体的な方法と、満たすべき要件について詳しく解説します。

1. 喫煙目的施設とは?

「喫煙目的施設」とは、健康増進法において、「喫煙を主たる目的とする施設」と定義されています。これに該当する飲食店は、店内の全部または一部を喫煙目的室として設置し、その場所で喫煙と飲食を可能にすることができます。

この「喫煙目的施設」として認められるためには、以下の3つの重要な要件をすべて満たす必要があります。

2. 喫煙目的施設の3つの要件

(1) 主食を提供しないこと

喫煙目的施設では、「通常主食と認められる食事」を主として提供してはいけません。

  • 提供可能なもの: おつまみ、軽食、デザートなど、食事の補助的な役割を持つものが該当します。
  • 提供できないもの: ご飯、パン、麺類(ラーメン、うどんなど)、ピザ、お好み焼きといった、一食で満腹になるような主食類は提供できません。

この要件は、あくまで「主として」提供しないことなので、ランチ営業時などに主食を提供している場合でも、夜間が喫煙目的施設としての営業形態であれば認められることがあります。

(2) たばこの対面販売をしていること

これが喫煙目的施設として最も特徴的な要件であり、多くの飲食店が「喫煙目的室」の設置に踏み切る際のポイントとなります。

店内での喫煙を認めるには、お店自身がたばこ小売販売業の許可を得て、お客様に対してたばこを対面販売する必要があります。この許可には以下の2つの方法があります。

  • たばこ小売販売業許可: 財務大臣の許可を得て、自店でたばこを販売する方法です。この許可は、既存のたばこ販売店との距離基準が厳しく、新規で取得するのは非常に難しいとされています。
  • たばこ出張販売許可: 既存のたばこ小売業者と契約を結び、その業者の許可のもと、お店の場所でたばこを販売する方法です。多くの飲食店はこの方法を選択します。

たばこ販売の許可を得ていない飲食店は、たとえバーやスナックであっても、喫煙目的施設として認められません。

(3) 20歳未満の者の立ち入りを禁止すること

喫煙目的施設は、20歳未満の人の立ち入りが一切禁止されます。

  • お客様だけでなく従業員も対象: 20歳未満の従業員を雇用している場合、その従業員を喫煙目的室内に立ち入らせることはできません。清掃や片付けといった業務も対象となるため、勤務シフトや業務内容に配慮する必要があります。
  • 年齢確認の徹底: 施設の入り口に「20歳未満立入禁止」の標識を掲示し、入店の際に年齢確認を徹底する義務があります。

3. 開業・営業における手続き

喫煙目的施設として営業するためには、上記の要件を満たした上で、管轄の保健所や財務局へ必要な届出・申請を行います。

  1. 保健所への届出:
    • 施設の所在地を管轄する保健所に「喫煙目的室設置施設届出書」を提出します。
    • 届出書には、お店の概要や、たばこ販売の許可があることを示す書類(許可証の写しなど)を添付する必要があります。
  2. 標識の掲示:
    • お店の入り口と、喫煙目的室の入り口(店全体が喫煙目的室の場合はお店の入り口のみ)に、所定の標識を掲示します。
    • 標識には、「喫煙目的室であること」と「20歳未満の者の立ち入りが禁止されていること」を明記します。

これらの手続きを怠ると、過料などの罰則が科される可能性がありますので、必ず事前に確認し、正確な手続きを行いましょう。

まとめ

飲食店を喫煙目的施設として営業するには、「主食を提供しない」「たばこを販売する」「20歳未満の立ち入りを禁止する」という3つの要件をすべて満たす必要があります。

特に、たばこ販売の許可取得は必須要件であり、多くの場合は「たばこ出張販売許可」を利用することになります。

喫煙可能な飲食店の開業には、法律や条例を遵守した上で、適切な手続きを行う必要があります。

今回の記事が、喫煙可能な飲食店の開業を検討している方の参考になれば幸いです。

この記事を書いた人
京都安心行政書士事務所

【保有資格】
・行政書士(日本行政書士会連合会登録/京都府行政書士会所属)・ファイナンシャルプランニング技能士3級(資産設計提案業務)・宅地建物取引士試験合格

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