【定款変更】原始定款は変更しなくていい?現行定款との決定的な違いについて

原始定款と現行定款は、どちらも会社の「定款」ですが、その内容と役割に明確な違いがあります。

「定款」がどちらのことを指しているか、これらの違いを理解することが会社の設立や運営において非常に重要です。

原始定款と現行定款の役割の違い

結論から言うと、原始定款は会社の「出生証明書」であり、現行定款は会社の「現在のルールブック」です。

原始定款(げんしていかん)

  • 定義: 会社を設立する際に、発起人によって最初に作成され、公証役場で公証人の認証を受けた定款のことです。
  • 役割: 会社の設立登記を行うために必須の書類であり、会社の商号(名称)、事業目的、本店所在地、発行可能株式総数など、会社が誕生した時点の根本的なルールを定めます。
  • 性質: 公証人の認証を受けた原始定款は、それ自体を直接修正したり書き換えたりすることはありません。会社設立時の状態を記録する、いわば「原本」としての役割を担います。

現行定款(げんこうていかん)

  • 定義: 会社設立後に、株主総会の特別決議などで内容が変更された、現在有効な最新の定款のことです。
  • 役割: 会社の現状に合わせたルールブックとして機能します。事業目的の追加や変更、役員の任期の変更、会社の住所移転など、会社の状況が変わるたびに内容を更新し、許認可申請や金融機関との取引など、様々な場面で提出を求められることがあります。
  • 性質: 会社が自ら作成・管理するもので、公証人の認証は不要です。過去の定款変更の履歴を反映した、常に最新のルールを記載しています。

具体的な違いのイメージ

例えるなら、原始定款は「建物の最初の設計図」です。この設計図がないと建物を建てることができません。

一方、現行定款は「増改築を重ねた後の最新の設計図」です。建物の骨格は最初の設計図(原始定款)に基づきますが、その後の改修工事(定款変更)によって、窓の位置が変わったり、部屋が増えたりした内容が反映されています。

  • 会社設立後、一度も定款を変更していない場合 この場合は、原始定款と現行定款の内容は同じものとなります。
  • 会社設立後、定款を変更した場合 例えば、新しい事業を始めるために事業目的を追加した場合、この変更は株主総会の決議を経て、登記簿にも反映されます。この変更後の定款が「現行定款」となります。原始定款はあくまでも設立時の内容のまま保管されます。

原始定款と現行定款の違い

区分原始定款現行定款
作成時期会社設立時会社設立後、変更が生じた都度
認証必須(公証人による認証)不要
内容会社の設立時点のルール会社の現在有効な最新のルール
役割設立登記の必須書類、会社の履歴会社の運営ルール、各種手続きで提出
保管公証役場に20年間保管される会社が自社で保管・管理する

ではどうのような場合に定款を変更する必要があるか解説します。

定款は必ずしも頻繁に変更する必要はありませんが、特定の状況下では変更が必須となります。

定款を変更すべき主な理由は、会社の法的義務の履行事業活動の変化に対応するためです。

定款を変更する必要がある主なケース

1. 事業目的を変更・追加・削除する場合 新しい事業を始める際や、事業内容が時代に合わなくなった場合、定款の事業目的にその内容を追加または削除する必要があります。許認可が必要な事業を行う場合は、定款にその事業目的が記載されていないと申請が受理されません。

2. 会社の商号(社名)を変更する場合 会社のブランドイメージを一新したり、合併によって社名を変更したりする場合、定款の商号を変更しなければなりません。

3. 会社の所在地(本店)を変更する場合 会社を別の場所に移転する場合、定款の本店所在地を変更する必要があります。ただし、定款で「東京都渋谷区」のように市町村までしか定めていない場合は、区内の別の場所に移転しても定款変更は不要です。

4. 役員に関するルールを変更する場合 取締役や監査役の任期を延長したり、役員の人数を増やしたりする場合、定款の規定を変更する必要があります。

5. 株式に関するルールを変更する場合 株式の譲渡制限を設けたり、発行可能株式総数を増やしたりする場合も、定款変更が必要です。


定款変更の手続き

定款を変更する際は、株主総会の特別決議が必要です。この決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上が賛成しなければ成立しません。

決議後、変更内容によっては法務局で変更登記を行う必要があります。

まとめ

定款は、会社の法律上のルールブックです。会社の状況や事業内容に変化があったにもかかわらず定款を変更しないままだと、法律違反になったり、事業運営に支障が出たりするリスクがあります。

特に、事業目的や会社の所在地など、登記事項に関わる変更は必ず定款を変更し、その内容を登記しなければなりません。

現在の会社の状況と定款の内容を見比べて、変更が必要な点がないか定期的に確認することをおすすめします。