養育費が月2万円になるのはどんなケース?
離婚後、子どもの生活を支える養育費は、親の義務として法律で定められています。しかし、具体的な金額については夫婦間の話し合いや、それがまとまらない場合は家庭裁判所の調停・審判で決定されます。この際、広く用いられるのが「養育費算定表」です。
この算定表を参照すると、養育費が月額2万円という金額になるケースがたしかに存在します。しかし、「法定養育費」が月2万円と一律に決まっているわけではありません。ここでは、養育費が月額2万円となる具体的なケースと、その背景にある考え方について解説します。
「法定養育費」とは何か?
まず、養育費は、親の収入や子どもの人数・年齢に応じて、それぞれの負担能力に応じて分担されるべきものとされています。この公平な分担を実現するために、裁判所が作成し、広く利用されているのが「養育費算定表」です。
この算定表によって導き出される金額を、事実上の「法定養育費」と呼ぶことがあります。算定表は、支払う側と受け取る側の双方の収入を軸として、交差する部分に養育費の目安額が記載されています。
養育費が月2万円になるケース
養育費算定表を見ると、月2万円という金額は、比較的「低額」な部類に入ります。具体的にどのような場合にこの金額となるかというと、主に以下の要因が考えられます。
1. 支払う側の収入が低い場合
養育費の金額を決定する最も重要な要素の一つが、支払う側の親(義務者)の収入です。 養育費算定表では、義務者の年収が低いほど、養育費の金額も低くなります。
- 給与所得者の場合 義務者の年収が200万円程度、あるいはそれ以下の場合、養育費は月額2万円以下となることが多くなります。
- 自営業者の場合 自営業者も同様で、所得額が低い場合は養育費も低額となります。
支払う側の収入が養育費の算定に大きな影響を与えるため、非正規雇用や失業、病気などで収入が安定しない場合、算定表に基づくと養育費は低額にならざるを得ません。
2. 受け取る側の収入が高い場合
養育費は、父母双方の収入バランスによって決まります。そのため、養育費を受け取る側の親(権利者)の収入が高い場合、その分養育費の必要性が低いと判断され、支払われる金額が低くなることがあります。
例えば、義務者の年収が300万円でも、権利者が同程度の収入を得ているようなケースでは、養育費は低額になる可能性があります。
なぜ月2万円という金額が議論されるのか?
最近の法改正の議論において、離婚時の取り決めがない場合でも請求できる「法定養育費」として、子ども1人あたり月2万円とする案が検討されているという報道がありました。
これは、養育費の不払いが社会問題化している現状を受け、最低限の養育費を確保するための新たな制度です。この「暫定的な養育費」として、月2万円という金額が検討されている背景には、以下のような考え方があります。
- 未払い対策の強化:養育費の取り決めがない場合でも、最低限の金額を法的に請求できるようにすることで、子どもの生活を保護する。
- 簡易な手続き:個別の事情を考慮しない簡易的な方法で、早急に支払いを開始させることを目的としている。
しかし、この金額はあくまで「暫定的」なものであり、個々の事情を考慮して算定される養育費とは異なります。月2万円という金額が、子どもの健全な成長に必要な費用として十分であるかについては、様々な議論があります。
まとめ:月2万円という養育費の持つ意味
養育費が月2万円となるケースは、主に支払う側の収入が低い場合に該当します。これは、養育費が「親の負担能力」を考慮して定められるという原則に基づいています。
しかし、近年検討されている「法定養育費」の制度は、養育費未払い問題を解決するための新たなアプローチであり、算定表に基づく個別の養育費とは別の文脈で議論されています。
養育費の金額は、一度決まった後でも、収入の増減や再婚などの事情変更によって見直しが可能です。養育費について疑問や不安がある場合は、専門家や家庭裁判所に相談することで、適切な解決策を見つけることができます。

